ポルテーニョ社会に対する【傾向と対策】

 ブエノスアイレス出身のアルゼンチン人達のことを『ポルテーニョ』と言います。
『ポルテーニョ』という名は、一般的には様々な港のある都市に住む人々に対して使われるもの。アルゼンチンのブエノスアイレス、チリならバルパライソなどもそうです。日本で言えば、神戸や横浜など、港がある街の住人は、いわば、ポルテーニョになりますね。

 そして、アルゼンチンで『ポルテーニョ』と言えば『ブエノスアイレスっ子』のこと。そして、ポルテーニョ達が話すスペイン語も『ポルテーニョ』。『僕たちはスペイン語ではなくて、ポルテーニョを話すからね』なんていう表現をします。
アルゼンチンはとても大きな国なので、広大で豊かなその土地が、多様な文化を抱え込んでいます。そして、その中でも首都であるブエノスアイレスは、その他の地に住むアルゼンチン人にとっては、とても都会的で特別なところ。そのブエノスアイレスに住む『ポルテーニョ』達も、その周りからの「特別感」を感じているからなのか、独特の雰囲気を持っています。周りからは、気取っている、などと思われがちなようですが、それも「ポルテーニョのプライド」とでも言えるのでしょうか。

 そんなアルゼンチンの首都ブエノスアイレス、そして、そこで生活するポルテーニョ達の個性と魅力溢れる社会性や生活習慣の『傾向』と、日本人の私達がとるべき『対策』を、とびきりの愛❤︎を込めてまとめてみました。
 1998年の年末に初めてブエノスアイレスの地にたどり着いてから、もう20年以上が経過していますが、ポルテーニョ達の習慣や行動には大きな変化は見られず。きっとこの先も変わらずに、私達を暖かく受け入れてくれること間違いありません。
『いつか、ブエノスアイレスへ行ってみたい!』と思っておられる方は、是非、旅の参考に。

<En la calle:街歩き>

(傾向)
月一回は、必ず犬のフンを踏むので、運が着くはずにも関わらず、特に運気は上がらない。踏み方が悪いのだろうか。
(対策)
普通に歩いていれば必ず踏める。運気が上がらなくても特に気にしない。そのうち上がる!

写真:犬のフン専用のポリ袋が公園に設置されている。
日本より親切。それでもフンがあちこちに。


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(傾向)
野良犬がものすごく上手に横断歩道を渡る。たまに犬の顔が「ドヤ顔」に見えることもある。
(対策)
彼らを見習って、ちゃんと信号を守ろう。
ブエノスアイレスでは交通事故が多発している。車優先だから車は止まってくれないので十分に注意しよう。

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(傾向)
雨の日に限って、歩道の緩んだタイルを踏んで、靴と足が泥まみれになる。
晴れの日には、タイルがそんなに緩んでいない。
(対策)
泥まみれになっても気にならないレインシューズを履こう。
この街のタイルは毎日のように、あちこちでどんどん緩んで行く一方。

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(傾向)
歩道で、完全に一体になったラブラブ・カップルに前を歩かれると確実に予定が遅れる。タンゴの街は抱擁の街、歩道を占領されやすい。
(対策)
出来るだけ早急にカップルを追い抜く。または、自分もカップルになって歩道を占領してこれまでのお返しをする。

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(傾向)
夜道で、後ろに誰かが歩いていると、ものすごく警戒して、道を渡ったり避けたりしてしまう。その結果、後ろに歩いている人が『危険人物だと思われた』と気を悪くしたり、怒ったりする事がある。
あまり他人の気持ちを害したくないので、なるべく自分が後ろになるように歩く。そうすると、今度は、前の人が自分をものすごく警戒するので、申し訳なく感じる。『相手の立場になって考えなさい!』と徹底的に教育された日本人にとっては、ブエノスアイレスの夜道は、危険回避で疲れるのと同時に、気疲れする。
(対策)
夜道は一人で絶対に歩かない!これに限る。前の人、後ろの人への気疲れも避けられる。

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(傾向)
夜中に叫んでる人がいても、もう特に何も感じない。
 (最初の3回は何事?とびっくりする)
(対策)
自宅で叫び声を聞くのは問題無し。もし夜道で聞こえてきたら、人通りのある大通りに出るなりタクシーで帰宅するなり、早急にその場から立ち去るべし。
もしくは自分が叫んで周りに「おかしな人」と思わせる。ただし、これにはかなりの勇気がいるので、やはり、すぐにその場から立ち去ることをオススメする。

<En el supermercado:スーパーにて>

(傾向)
スーパーのレジ係のリラックス度が半端ない。5番レジと8番レジ同士で、昨日のデートの話で盛り上がる。そこにフロア係が割り込んできて、さらにお喋りは続く。「お客さんの長い行列を見て焦る」という神経系は彼らには存在しない。それぐらいメンタルが強くないと、アルゼンチンのスーパーのレジ係は務まらない。
(対策-1)
スーパーのレジのバイト希望の場合、客の行列が出来ていても全く気にせずに3つぐらい向こうのレジ係とお喋り出来る強いメンタルが必要。まずは禅寺などに籠もって精神を鍛えよう。
(対策-2)
急ぎの買い物は大きなスーパーより各ブロックに一つは存在する中国人スーパーがオススメ。スーパーの中国人店員達は商売っ気があるため、喋りながらでもレジを打てる。 ただ、やたらと『お釣りが無いからアメちゃんで我慢して』と言ってくるので、アメちゃんが欲しい場合は良いが、いらない場合は、釣りをくれ!とはっきりと言い切ろう。お釣りは必ず出てくる。

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(傾向)
巨大なカートに、せっかく買いたい物を一杯入れたのに、レジで一旦全て出さなければならないのが、こちらのスーパーのシステム。
カートが大きすぎて、レジの台とカートに挟まれて、カートの一番下に入っている物を出すのが結構大変。
それに比べて、日本のレジシステムは、商品の入ったカゴをそのままレジ台へ置けるのが素晴らしい! 早急に取り入れて欲しいシステムの一つ。
(対策-1)
カートの一番下まで余裕で手が届く、腕の長い大きな友人と買い物へ行く。
または、ストレッチなどで柔軟性を鍛える。
(対策-2)
日本のシステム導入お願いするために、すぐにでも政府へ嘆願書を提出しよう。ただ、今の政府が仮にお願い事を聞いてくれたとしても、政権交代で前政権のプロジェクトは白紙に戻ることを覚えておこう。四年以上の長期計画は不可能に近いのがアルゼンチンである。

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(傾向)
ブエノスアイレスの大型スーパーは、小型スーパーの在庫を、全て店内に並べたために大型になったスーパー。小型でも中型でも大型でも、置いてある品数はあまり変わらない。
(対策)
価格は別なので要チェック。

<En el colectivo:バスに乗る>

(傾向)
バスに乗る時、普通のオヤジがやたらと紳士になり、先に乗らせてくれる。
素晴らしい習慣。
(対策)
オヤジ達の親切は快く受け取ろう。ただ、あんまりこの習慣が板につき始めると、先に割り込んで来るような日本のオヤジ達に腹が立ってしまう可能性もあるので注意が必要。 日本とアルゼンチンは地球の全く反対側に位置するので、習慣が反対でも仕方ない、と諦めよう。
   
(注意)
もし、ついつい女性を優先せず、自分が先に乗ってしまう人がこれを読んでいるなら、アルゼンチン方式を絶対に見習うべき。きっと女性への好感度が上がる。

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(傾向)
バスで前の方に座ってしまうと、確実に途中で、老人や妊婦さん、子連れの家族に席を譲ることになるので、どうしても疲れている時はなるべく後ろの方に座りたい。
(対策)
バス前方の座席は『優先座席』だと思おう。日本のように小洒落た優先座席マークは存在しない。仮に座っていて、老人や妊婦さん、子連れの家族などが乗ってきたら、躊躇せず速攻で席を譲ってみよう。それが自然に出来たら、あなたも『ポルテーニョ/ポルテーニャ』の仲間入り。スペイン語に自信がなくても実行できる。

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(傾向)
バスでみんなが『ささっ』と席を譲るのを見るのは本当に心地よい。ただ、背中の曲がりかけたおばあちゃまが、10歳ぐらいの、しっかり成長したデカイ子供に席を譲るのは、未だに理解し難い。(バスが揺れて危ないから、などという理由もあるらしいけれど、それなら、おばあちゃまの方が危険度は高いと思われる。子供は身体が柔らかい。)
(対策)
個人的には、私はデカイ子供には譲らない。バスが急停車したら、絶対に私の骨の方がたくさん折れる。どちらかと言えば、疲れ切ったその子のママに譲りたい。

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(傾向)
バスを降りる場所に自信がなくて、誰か一人に尋ねると、大体3人ぐらいが答えてくれて、とても心強い。いっぺんに色々喋られて、余計訳がわからなくなることもあるが、分かった風を装えば良し。みんなが教えてくれるというのは、やっぱり有難い。
(対策)
最近では携帯のGoogle Map機能で降りる場所がわかるようになって来た。昔はそんなものが無かったので必ず誰かに尋ねたもの。
でも、バスでは携帯強盗が多発するので、携帯で地図を見る場合は十分に注意しよう。チラリ、と確認してすぐにバッグに仕舞う。是非、勇気を出して周りの人に尋ねてみよう。何言っているのか分からなくても気にしない。
笑顔でGracias ! を連発しておけば良い。

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(傾向)
バスで乗客が携帯電話を奪われる場面に何度か遭遇。動体視力が全く追いつかないほど、素早いスリの動きは、箕面の猿が、人間の食べ物をかっさらって行くところとダブってしまう。ということは、こちらのスリ達は、猿山でも食いっぱぐれないということか。その、人間離れした集中力と身体能力は、是非、別の事に生かしてもらいたい。
(対策)
ブエノスアイレスのバスの中では『携帯』を、箕面の滝・散策時には『食べ物』を、ちゃんと鞄の中にしまっておこう。

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(傾向)
ブエノスアイレスのバスに乗ると、高校物理を思い出す。
角を曲がる時にはニュートンの『重力”G”』を感じるし、停車時にはこれまたニュートンの 『慣性の法則 ※1 ”』を体感、その際に、様々な大きさの携帯電話が鞄から飛び出してほぼ同時に床に落ちる時には、ガリレオ・ガリレイの『落下法則※2』を目の当たりにする。

※1 :モノが一度動き出すと外から力が加わらない限り動き続ける運動力学
※2:物体の落下速度はその物体の重さによらず一定である(ピサの斜塔実験)


(対策)
毎回の高校物理体験を、怪我せずに安全に行うために、バスの中では必ず「どこか」を「しっかりと」掴んで準備しておこう。運転手さんのその日の気分によっては、NASAの宇宙飛行士訓練にも負けないG体験があなたを待っている。
高校物理が苦手な人はブエノスアイレスでバスに乗って、実際に体感してみよう。きっと物理が好きになる。

<En la Sociedad:人間社会>

(傾向)
約束に遅れたり、ドタキャンするための弁解を、ポルテーニョ1人につき、150通りは準備している。その弁解が「どう考えてもありえないやろ」という内容でも、自信満々で弁解してくる。生まれつきの役者気質。その演技力は半端ない。
(対策-1)
ポルテーニョ達と待ち合わせをするなら、少なくとも30分は「待ちしろ」(「縫いしろ」の待ち時間版)を作る。そうすれば、あまり腹が立たない。
(対策 -2)
渋滞、停電、水漏れ、電話不通、デモ活動による道路封鎖、などなど、遅延理由は街のあちこちに存在している。あなたも<弁解メモ>を作って、自分が約束に遅れた時には有効に利用してみよう。きっとポルテーニョ気分を味わえる。実は私もすっかり仲間入りしている。


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(傾向)
「ブエノスアイレスのおばちゃん」と「関西のおばちゃん」は、人類の歴史のどこかで起源を同じくしているとしか思えない。
ミロンガで、隣の席の知らないおばちゃんがアメちゃんやチョコレートをくれたし、虎柄のトップスに豹柄のスパッツ、なんていう組み合わせを「お出かけ着」とし普通に着こなしている。スーパーでは、ややこしい名前のチーズの種類について尋ねられ、あまりの自然な会話導入に、『知り合いだったっけ?』と思わされる。
そんな時、自分がブエノスアイレスにいるのか、関西にいるのか、混乱することも。

(対策)
この現象に対しては対策は不能。自分はいわゆる「関西のおばちゃん」に該当するので、有難いことに、こちらのおばちゃんに対しての違和感は感じない。
関西以外の地域からブエノスアイレスへお越しになる方は、関西空港経由の飛行機で来られたらいががだろう。 関空でのトランジットが多少の緩衝剤となるのでは無いだろうか。

【仮説】
(1) 南・北半球おばちゃん混合説
アインシュタインの言う通り「時空の歪み※3」が存在するならば、ちょうど時空が歪んだポイントで、関西のおばちゃんとブエノスアイレスのおばちゃんが混ざり合ったに違いない。
(2) ポルテーニョのスペイン語は関西風説
ポルテーニョ達が話すスペイン語はどうしても関西風に聞こえる。
これも、上記(1)で記したように、混ざり合ったおばちゃん達の影響か。要・調査。

※3 :時間と空間は質量(重さ)によって歪む(相対性理論より)
「時空の歪み」に興味がある方はこちらを参考に。分かりやすく説明されています。
https://higgstan.com/what-is-gravitational-waves/

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番外編・・・Encuesta Milonguera :ミロンガ職業調査
その昔、ミロンガで「職業調査」を行ってみた事がある。『平日の夜中の2時、3時に、何故こんなにもたくさんの人が踊っていられるのか?』という疑問が沸いたため。踊った人全てに職業を聞いていくという調査方法で、結果には以下のような傾向が現れた。

1) 「心理学者」「心理セラピスト」が圧倒的に多い。心理セラピストも「セラピー」を受けるそうだから、セラピスト一人に対して、もう一人セラピストが必要な訳で、需要は沢山あるようだ。そう言えば、みんな「○○セラピー」が大好き。一人で受けるセラピーはもちろん、カップル/家族/離婚/セックス・セラピーなどなど、様々なセラピーが存在するらしい。 
『ブエノスアイレスでは石を投げたら必ず「心理セラピスト」か「タンゴの先生」に当たる』、と誰かが言っていた。これが本当かどうかは調査しづらい。

2) 生計を立てるための職業を持ちつつの「アーティスト」(画家、ミュージシャン、ダンサー、俳優など)も、とても多い。 『僕はアーティストなんだ!』と自信満々に自己紹介できる事に文化の違いを感じた。仮に自分が芸術活動をしていたとしても、初めての自己紹介で『私、アーティストなの!』とは言えないような気がする。自信に溢れるポルテーニョ達はとてもカッコいい。

3) 「普通の会社員」。この人達には、翌日何時に起床か尋ねたところ、朝7時や8時には起きると言う。寝る時間が無いけど大丈夫?と聞くと、オフィスで寝るから大丈夫、とか、お昼休みに家に帰って昼寝する(お昼休みが2時間、という人も)、という返答。いくらお昼寝するにしても、会社員ミロンゲーロス、凄い体力。

5) 「自営業」時間の自由が聞くから、夜更かししても大丈夫。

4)「定年退職者」この人達も夜更かしOK。昼間のミロンガと夜のミロンガを掛け持ちする、という人もいた。何というエネルギー。元気な爺さん達だ。

※調査したのは約20年前。私もまだ若かりし頃。要・再調査。

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【あとがき】
愛しのブエノスアイレスでの日々の生活の中で感じる事を、あくまでも、私の ” 独断と偏見 ” を持ってまとめた内容である事をご了承ください。 
ブエノスアイレスに来られた時には、とびきり人間的で魅力溢れる『ポルテーニョ』達との交流を楽しんでみてください。