ブエノスアイレス・タンゴをめぐる論争Vol.2

今回は先日発覚した、ブエノスアイレスのミロンガへの<コロナ対策・緊急支援騒動>についてご紹介します。

先日、知り合いのタンゴ関係者から、BAMILONGAというタンゴ活動推進のための公的機関を通して、コロナ対策の緊急給付金がおりた!という内容の文章とミロンガのリストが回ってきました。

こちらがその内容。
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ミロンガへのCovid-19緊急支援


ブエノスアイレス市文化省の文化プログラムであるBAMILONGA(タンゴ活動を推進するための機関)を通して、ブエノスアイレス市の89軒の民間ミロンガが、Covid-19の被害を受けたことにより、文化的な運営と管理のための経済的な緊急支援を受けられることになりました。

選ばれた89軒に加え、今後発表される9軒が追加され、合計で98軒のミロンガが、合計16,200,000ペソを受け取ることになります。

BAMILONGAは、市のミロンガ活動の保護、強化、促進、および宣伝の仕組みをつくり実践するためのプログラムです。

それぞれのミロンガが平均160,000ペソを受け取ることになっています。
同様に、当初予定されていた10,800,000ペソの予算は、Covid 19被害の緊急事態による本分野の困難な経済状況により 5,400,000ペソ増大し、合計金額は16,200,000ペソに達しました。

民間ミロンガ活動登録簿に登録されたミロンガの主催者、認可されているミロンガ会場、または民間ミロンガ活動登録簿に登録された法律2.323号に従って登録手続きを開始しているミロンガ会場が、この給付金に登録する事が出来ました。

★この文書と共に給付金を受け取る予定のミロンガのリストがついていました。

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ちなみに、現在のペソの価値ですが、つい先日、両替に行った時には、1ドル が約134ペソ(Blueレートと呼ばれます)でした。もし私が日本のクレジットカードを使ったり、ATMから日本のカードでお金を引き出した場合は公式レート75ペソなどという換算になりますので、かなり損をします。

『それぞれのミロンガが平均160,000ペソを受け取る』とありますので、このBlue レートで換算すると平均1200ドル程度が給付される、ということです。
また、『Covid 19被害の緊急事態による本分野の困難な経済状況により 5,400,000ペソ増大し、合計金額は16,200,000ペソに』とありますので、Covid 19被害による緊急事態の増大分は約40,300ドル給付金合計は120,895ドルということになります。

さて、このような告知が届いてすぐ、今度はまた別の文書が公開されました。本当にこの間から、しょっちゅう色んな文書が回ってきます。いちいち文字が小さくて読むのが本当に辛い・・・
回ってきた文書はこちら。
タンゴ関連の二つの協会、AOM Mi.Se.So がブエノスアイレス市文化省へ向けて提出したものです。

この文書の内容はこちらです
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ブエノスアイレス市の文化省に反省を要請する

AOM (Asosiacion de Organizadores de Milongas)Mi.Se.So (Asosiacion de Milongas con Sentido Social) の委員会代表は、ブエノスアイレス市文化省当局へ反省を呼びかける。

文化組織の集合団体による大規模な支援の要求、
それに加え、急遽、何の基準も無く組織されたタンゴ・フェスティバル&世界選手権によってタンゴコミュニティで発生した否認と拒否などが、
BAMILOBGA制度で承認された一部のプロジェクトを、不完全、不正確、規則違反して公表したブエノスアイレス市文化省に対する主張である。

BAMILOBGAはタンゴの活動をサポートする唯一の補助金制度である。
文化的および経済的観点の両方から見ても、活動内容の規模と比較すると予算は非常に小さいものである。
受益者(給付金受取人)が厳格に遂行および実行するべき具体的なプロジェクトの実現をサポートするものである。

ただ苦情を黙らせようとする必要性から
誤った予算配分で、法律で定められているように各受益者に通知する前に
不完全な受益者のリストをメディアに公開したことや

4月の段階で、代表する複数の協会によって管理しているインフレの最新情報を通知した際に、衛生上の緊急事態のために大規模な損失が承認されたことを認めるべきである。

内容が欠落していない場合、嘘のマーケティングはさておき、
我々は、ブエノスアイレス市文化省当局に対し、大規模な支援の要請に対する現実的かつ効果的な解決策を見出すことに力を注ぐよう要請する。

あなた方がそのような手段に出るならば、今回は我々が最初に公開する。

2020年8月29日 ブエノスアイレス市

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正直、このような文書は内容を理解するのもなかなか大変。上記内容もわかる範囲で和訳していますのでご了承を。文字が小さい、とか言っているのはただの弁解。なんでこんな分かりにくい書き方をするのだろうと思いつつ、無理やり読んでみることに。すると分かりにくいながらも、この文書の前に届いた<緊急給付金>に関する告知に何らかの問題があることが発覚。
具体的にどんな問題なのかを確認するため、この文書の提出者でもあるミロンガ主催者協会AOMの代表者フリオ・バッサンに直接確かめることにしました。
彼は、毎日のように色んな団体、色んな協会とZoomでミーティングをしていて、捕まえるがなかなか大変。なんとか捕獲でき、一体どんな状況にあるのかを聞いてみました。

フリオが最初に行った言葉、それは
『コロナ対策・緊急支援などというのは嘘っぱち!』

えー!!うそっぱち????

彼の説明はこうでした。
ミロンガ主催者やミロンガ会場のオーナーなどは、BAMILONGAを通して年間予算を提出し、それが認められるとブエノスアイレス市から補助金がおります。今年2020年もその手続きをしていたものの、一向にに支払われる様子が無かったそう。
また、3年前にBAMILONGAが設立されて以降、アルゼンチンの激しいインフレにより予算見直しを行い、当初の予算10,800,000ペソから5,400,000ペソを追加した16,200,000ペソを給付金として提案していたそう。
しかし、インフレには拍車がかかり今年の見直し予算では約13,000,000ペソの増加が必要だそうです。

すなわち、ブエノスアイレス市がコロナ対策・緊急支援とうたって給付する、と公開した内容は、実はまだ支払われていない今年度分の通常給付金だったのです。
その上、緊急支援のため5,400,000ペソ増やして給付する、という内容も、実はインフレによる3年前からの予算見直し分。現在のインフレを考慮するともっと増やす必要がある訳ですね。

また、このような給付金や補助金が下りることになった場合、法律上、まずは受益者(受け取り者)に通知してから公開する、という手順だそうで、今回の場合、そんな前振りは一切なく、いきなりコロナ対策・緊急支援で、予算を増大させて給付します!と公開されたそうで、法律違反になる訳です。

給付金はいつ支払ってもらえるの?と聞くと、その質問に対する答えは返って来ていない、とのこと。
『ミロンガの主催者やサロンのオーナーなどは、コロナ被害により多額の借金を抱えている人も多いから、例えこの先、この給付金がおりたとしても、この金額では借金の返済に充てるしか無いだろうね』とフリオ。

そしてこの給付金、実はミロンガで雇うDJやダンサー、歌手、オーケストラなどのアーティストへ支払う給料としてのみ使用できる、と決まっています。
ミロンガが閉鎖されている今、アーティストへの給料として使うことは不可能、受け取っても結局は使えないの??と聞いたところ
『それも大きな問題でね。今、給付金を領収証無しで使えるように交渉中なんだよ』とのこと。
なるほど、そうでないと、受け取っても使えないのでは意味がないですよね。いちいち訴えないといけなくて本当に大変。フリオが毎日ミーティングしているのも納得です。

そんなこんなで、AOMMi.Se.So の両協会が一緒にブエノスアイレス市文化省当局にこのような文書を提出した訳だったのです。
前回投稿した<ブエノスアイレス・タンゴをめぐる論争>では、先日開催されたオンラインでのタンゴ・フェスティバル&世界選手権に対するアーティスト達からの不満に関する記事などを紹介しました。今回の嘆願書(と呼ばれるのかどうかは不明)にもフェスティバルに対する不満の内容が含まれています。

彼らが特に腹を立てているのは、通常の給付金なのに、コロナ対策の緊急支援、と嘘をついて、メディアには良い顔をし、受取人側に不満申し立てをさせないようにした事なのでしょう。そんなことをしたら余計に怒りが湧いてくる事は予想できると思うのですが、まあ、やはりそこがアルゼンチン。アルゼンチン人自身が「アルゼンチンだからね・・・」と半分諦めて使う魔法の言葉。

とにかく、給付金を出す!と公表したなら、リストにある98軒のミロンガやサロンオーナーにさっさと支払ってあげて欲しいものです。そしてそのお金は、生活費でも何でも、それぞれが必要なものに使えるように。

今、アルゼンチンではコロナの感染がどんどん広がって、街によっては医療崩壊するかしないか、というような状況。ブエノスアイレス市も感染スピードは多少緩やかになって来てはいるものの、まだまだ気を緩められる状況ではありません。そしてコロナ被害による長い長い隔離により、すでに低迷していたアルゼンチン経済はさらに崩れ落ちています。その上この国は、ペロン派(クリスティーナ派、現在の政府がそうです)と そうでない派(ブエノスアイレス市のトップは前大統領マクリ派)に真っ二つに分断されています。この国の発展、そしてタンゴという文化の発展をも妨げている原因はそんなところにもあるような気がします。党派に関わらず、心を一つに、この世界危機を乗り越えて頂きたいもの。

最後までお読み頂きありがとうございました。
タンゴをめぐる論争、また色々調査してご紹介したいと思います。お楽しみに!


あとがき

現在、ブエノスアイレスに約200軒存在するミロンガを支援するクラウドファンディング・プロジェクトを実施中です!
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Buenos Aires MILONGAS AID
タンゴのダンスサロンを閉鎖の危機から守ろう!

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ブエノスアイレスのミロンガはタンゴの聖地。
そのミロンガが今、存続の危機に陥っています!
コロナ危機が収束後、一つでも多くのミロンガが再開出来るよう、私達と一緒にサポートしませんか?
プロジェクト・スタートから約2週間が経過した今、皆様からのご支援が<961,000円>集まっています。寄付して頂いたご支援は、ミロンガが公的な給付金・補助金を受け取れるように法的手続き等を担うミロンガ主催者協会AOMの運営資金、そしてブエノスアイレスに存在する全てのミロンガへの支援金として使われます。
ファンディング、そしてプロジェクト拡散など、どのようなご協力も大変有り難いです。今日の投稿を気に入って頂けましたら是非ご支援ください。どうぞよろしくお願い致します。

プロジェクトへはこちらから
https://motion-gallery.net/projects/supportbamilongas