9月に入り、日差しも暖かくなった矢先、風の強い初春の嵐の季節がやって来ました。

そして先日の日曜日、アルゼンチンでは上院・下院議員候補者を決める選挙「パソ」
(Paso= Primarias Abiertas Simultáneas y Obligatorias = 同時かつ投票が義務付けられたオープン予備選) が行われました。11月14日の本チャン総選挙で上院・下院の議席を争う候補者を選ぶ選挙。予備選とはいえ、国会での議席確保のための大切な選挙で、パソという名前の通り国民には投票の義務があります。


その予備選のため、ここ1ヶ月ほどは、テレビでも立候補議員の宣伝合戦。各党派、ラップミュージックやら、ストリートダンスやら、あの手この手で、若者の票を集めようと必死の様子でした。

そんな中、びっくり仰天した動画を発見。
男性票を集めたかったのか、下着姿でタンゴを歌って踊るセクシー議員シンティア・フェルナンデス。

https://www.youtube.com/watch?v=oHTgMhUEPHI

彼女の姿に気を取られて、投票の事など忘れてしまいそうですね。

こちらはアルゼンチンらしい宣伝用ビデオ。ブエノスアイレス州の議員候補フロレンシオ・ランダッソが公表したもので「みんながあなたに投票するように、ちゃんと宣伝しなさいよ!」彼のママが電話で息子に喋りまくります。

初めて聞いた時は、ママ役の女優さんが話しているのかと思いきや、本物のママでした。アルゼンチンのママ、なかなか強烈です。

そして選挙当日。結局、現在の政権、ペロン派政党(Frente de todos=みんなの代表党 )はあちこちの州や地区で敗退し、前大統領マウリシオ・マクリ率いる社会民主主義・共和主義派政党(Junto por el cambio=共に改革へ向けて) が勝利。とはいえ、アルベルト・フェルナンデス大統領率いる現政府が引き続き政権を握っている訳で、11月の本選挙に向けて、これから名誉挽回につとめるのでしょうか。

上記の地図:パソ投票結果、水色がペロン派政党、黄色がマクリ政党。2019年は水色が圧倒的ですが、今回は黄色が逆転勝利ですね。

貧困層の割合が国の半分以上となり、子供は4人のうち3人がまともな食事を取れない状況。インフレが進み続け、毎日のように物価が値上がりするも、給料は全くそれに追い付かず。国が補助金を出すものだから、それを目当てに正式な仕事に就かない人がどんどん増える(票獲得のための政府のやり方、という見方も)。元々問題が山積みだったアルゼンチンはコロナ禍でさらに大打撃を受けています。どの政党であれ、本当の意味で国民の味方、アルゼンチンが国民と共に発展して行ける政治を心から願います。

さて、お国事情はこれぐらいにして、今回は、やっと、嬉しいミロンガ事情を皆さんにご報告できる事となりました。
そう、早い話が <屋内ミロンガの開催が認められた!> というもの。
ミロンガを愛する全ての人達にとって、『やっとここまで辿り着いた!』と安堵のため息と歓喜の声が聞こえて来そうです。
屋内でのミロンガが認められるまでの経緯も含めて、いつものように、時間の経過と共に皆様にご紹介して行きます。

8月12日、AOMから、屋外ミロンガのプロトコルが出た!との告知が。
そのプロトコルの一部を以下にご紹介します。まずは目的、範囲から。

ミロンガ、タンゴ・プラクティカ、タンゴ・レッスンのためのプロトコル>

  1. 目的

この文書の目的は、主催者、ダンサー、アシスタントが安全な方法でミロンガ、タンゴ・プラクティカ、タンゴ・レッスンを徐々に開催して行くための予防措置を規制することにある。

 同様に、この文書の目的は、疑わしい症例とその人との接触が検出された際に適切な疫学的管理を実行するための推奨事項を提供することである。 この文書で確立された規則および/または推奨事項は、疫学的状況およびブエノスアイレス自治市政府の当局から発せられるその他の提案に関して生じる変更に応じて拡張または変更される場合がある。 

  1. 範囲

このプロトコルは、ミロンガ、タンゴの練習、ブエノスアイレスのタンゴのクラスの担当者、雇用者、アーティスト、協力者、及び/又はアシスタントなど、参加するすべての人に適用される。 開催資格がある会場(許可または保留中)または許可されている施設で実行できる活動範囲は、屋外のスペースで実行できる活動と関連している。 許可される活動は、次のとおりである。

  • 予約制タンゴのプラクティカ
  • 予約制タンゴレッスン

自然発生的・自主開催ミロンガは許可されていない。

「範囲」の最後に『自然発生的・自主開催ミロンガは許可されていない』とあるので、ミロンガは含まれていないようにも取れますが、これは、きちんと予約などを取らずに即興で開催するミロンガは許可されない、というような意味かと思います。
プラクティカとレッスンが許可されている、とありますが、AOMの告知によれば『ミロンガに関しては屋外での開催が許可された』という事でした。

それでは、続いて内容へ。
いつものようにプロトコル全部は長く、今回は約15ページに及ぶものなので一部だけご紹介。

4.2.2. ミロンガ、タンゴのプラクティカとレッスン

ミロンガ、タンゴのプラクティカとレッスン

  • 活動の再開においては、出席者と主催者の人員は最小限の人員配置とする。
  • ミロンガ、タンゴ・プラクティカ及びタンゴ・レッスンの主催者は、制限された参加者数に従って、事前登録により予約を受け付ける必要がある。
  • すべての人は、COVID-19に関連する症状が無い事を述べた健康宣誓供述書(付録Iを参照)に記入する必要がある。
  • 活動のための物理的空間を区切られなければならない。
  • 同居カップルまたは特定のタンゴカップルのみが参加出来る。
  • 会場にて履いて来た靴をダンスシューズに履き替えること。
  • ダンスパートナーを除いて、常に最低2メートルの距離を保たねばならない。
  • パートナーの変更は一切うことは出来ない
  • 練習において、ダンサー同士接触している時には、喋ってはならない。
  • 主催者の責任として、ダンスパートナー間の安全な距離を尊重すること。
  • 主催者も、ダンサーまたはアシスタントも、鼻、口、あごを覆うマスクを使用する必要があり、決してそれらを取り外すことは出来ない。
  • 安全な距離を維持するために、ダンスフロアに各カップルに対応する対応するマークを付けること。
  • 最長開催時間(シフト)は2時間で、各シフトの間に30分取り、道具を消毒し、混雑を避けるために参加者を入れ替えること。

 4.2.3 シフト制、入場、フロア循環

6. フロアでの循環について。ダンスフロアで必要な距離を尊重するために、円がダンスフロアに記されること。 

7.各円の表面積は7,065m2。円の数はフロアの総表面に依存するが、常に7,065 m2の円を尊重して踊ること(半径1.50 m)。同時に踊れるカップルの数は、利用可能な円の数から1を引いた数とする。

8.フロアへのアクセスと退場について。テーブルや椅子に最も近い円が空いている場合、常に社会的距離を尊重して、フロアにアクセス出来る。フロアからの退場は、タンダが終了すると、ペアは反時計回りを尊重する必要があり、例外なく、現在地から次の円が完全に空いた場合にのみ、前進して円を移動する。自分のテーブルや椅子に最も近い循環点にいるときにフロアを離れることが出来る。主催者は、フロアへのアクセスまたは退場のための回数やシフトを定義することも可能である。

6 . 占有率と上限

この場合、活動は4m2ごとに1人の占有率で屋外でのみ実行できる。練習を目的とした屋外エリアのみを考慮すること。施設はこのキャパシティを厳格に管理する義務がある。

いずれの場合も、上限は1000人とする。

 

とりあえず、このプロトコルにより、屋外ミロンガの開催が可能となりました。
そして、9月9日、AOMから発表されたのがこの文書。

ミロンガ・オーガナイザーとミロンゲーロの皆さんへ

 共同作業における忍耐力のおかげで、私たちは新しい成果を喜ぶことが出来ます:

ブエノスアイレス市の文化省から、913日から17日の週に、閉鎖されたスペースでミロンガを開催するためのプロトコルを承認する、という約束を得ました。

2020311日に「一時停止」し、今度は、承認されたプロトコルと正式な承認を得て、再開することができる事となりました。その連帯共感、互いのケア、努力、および団体としての約束を果たしたことを喜びましょう。今こそ、パンデミックを追いやる、この抱擁の地平線を祝いましょう。

 

AOM側からの喜びの気持ちが伝わって来る文書ですね。「抱擁の地平線」でコロナをやっつけたい!!
この文書で、やっと屋内ミロンガのプロトコルが出る!とオーガナイザ達は大喜び。早速、ミロンガ開催の告知などがFBに上がり始めました。
こちらは、<ラ・バルドサ>のオーガナイザ、アルバが4日前、即ち9月10日にFBに投稿したもの。

『9月24日(金)に再会しましょう!感激です! アルビータ』

そして、本日、9月13日、とうとう、ブエノスアイレス市から、屋内ミロンガの開催を許可するプロトコルが発表されました。本当についさっき連絡が来たばかりのフレッシュなネタです。プロトコルの内容自体は前回のプロトコルとほぼ同じ。え、何が違うん??と一生懸命、違いを探してみると、『範囲』の一部が変更されていました。プロトコルを徐々に改定して行っているのですね。
変更内容はこちら。前回分と比較してみました。

812日:屋外ミロンガ開催を許可するプロトコル>

上記の活動は、開催資格(許可または手続き中)または許可がこれらの活動と互換性のある施設またはスペースで実行される場合があり、屋外のオープン・スペースで実行することが出来る。

 913日:屋内ミロンガ開催を許可するプロトコル>

上記の活動は、開催資格(許可または手続き中)または許可がこれらの活動と互換性のある施設またはスペースで実行される場合があり、閉鎖および/または屋外スペースで実行することが出来る。

同様に、このプロトコルは、文化的空間および公共及び/又は個人的な会場で実行される活動を対象としている。

 結局、この部分で『屋内でミロンガを開催できますよ』と述べているようです。

また占有率と上限について、閉鎖空間の場合の条件が加わりました。

913日:屋内ミロンガ開催を許可するプロトコル>

4.2.1. 占有率と上限

閉鎖空間の場合:許容容量の占有率は、有効な最大容量に対して70%とする。

屋外スペースの場合:上限人数は2500人とする

(前回のプロトコルでは、屋外スペースでの上限は1000人でした)

他、多少の違いはあるものの、基本的な内容は前回のプロトコルと似通っています。
いずれ、今回発表されたプロトコル全文をご紹介しようと思っていますので少々お待ち下さい。

という事で、昨年の3月にミロンガが閉鎖されてから約1年半を経て、やっと、ミロンガ開催まで辿り着きました。

ちなみに、私達は9月4日(土)、ヘンテ・アミーガのチームでイベントを開催しました。その時点ではまだ屋内ミロンガの許可がでていなかったので、「ミロンガ」ではなく「ディナーショー」という形を取りました。偉大なマエストロでありダンサーのニト&エルバの功績を称える夜でした。


ミロンガではなかったものの、ミロンガを待ち望む面々が集まり、フロアには出なくてもミロンガの空気が流れていました。
その日、93歳のミロンゲーロ、トト・ファラルドが、エナメルの靴を新調して、やって来ました。トトと踊るのは2年ぶりでしたが、彼とアブラッソした途端、2年というブランクはあっという間に吹っ飛び、まるで先週も彼と踊っていたような気持ちになりました。約80年踊っているトト爺ちゃん、只者ではありません。


ミロンガではなかったけれど、ミロンガの、あのドキドキ・ワクワク感を久々に味わった夜でした。
次回はとうとうミロンガを開催出来そうです。もちろん、プロトコルを尊重して、必要な予防策を取り、出来る限り安全に、皆さんに楽しんでもらいたいと思います。
やっと、ブエノスアイレスにミロンガが戻って来るのです。それにしても、お休み期間が長かった〜。

去年3月からの、コロナ禍でのタンゴ事情、特にタンゴ・ダンスに関する政府からの告知やAOMからの報告文書、関連ジャーナル記事などは、『ブエノスアイレス、タンゴをめぐる論争』『ブエノスアイレス、タンゴ事情』にまとめてありますので、ご興味がある方は過去の記事をご覧ください。

長文、お読み頂き、ありがとうございました!
また、ミロンガ関連の新着情報が入りましたらご報告します。

Un beso grande desde Buenos Aires!

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