今は亡きミロンゲーロスの “ことばたち”

Facebookの思い出機能で、ある映像が上がって来ました。
残念ながら今はもう無い『シンルンボ・クラブ』でのミロンガで、今は亡き偉大なマエストロ・ミロンゲーロのお二人を、もう一人の偉大なマエストロ・ミロンゲーロ(ご健在!)がインタビューした映像。
やっぱり素敵やな〜!グッとくるわ〜!などと一人で感激しつつ、いつものようにFacebookでシェアしてみたところ・・・

『ビデオのインタビュー内容を知りたいから和訳して〜!!』

という熱烈コールが、地球の反対側から届きましたので(笑)それにお応えしてこちらでご紹介しようと思います。
皆さんには、これからご紹介する内容やインタビューの和訳を読んで頂いてから、映像を見て頂こうと思います。映像はその後に掲載します。

インタビューの和訳に入る前に、心と身体(頭?)の準備として、登場するミロンゲーロ達や撮影会場などについて、ちょっとだけご紹介しておきます。

Jorge Manganelli(ホルヘ・マンガネリ)

インタビュアー。
本物のタンゴを伝えるべく、世界中でレッスンや講演をして来たとても素晴らしいマエストロ。また、クラブ『アカレンセ』などで、幅広い世代の架け橋としてミロンガを主催した経験を持つオーガナイザでもあります。そしてもちろん、とっても素敵なミロンゲーロ。
ホセリカ製作の映画【MILONGUEROS〜ブエノスアイレス黄金のリズム】にも出演して頂いています。実は、この映画のミロンガのシーンでは、ワタクシがマエストロのお相手をさせて頂きました。人生の良き思い出トップテン入りです。


インタビューを受けているのは
ヘラルド・ポルタレアとラ・ルサのお二人。

GERArDO PORTALEAヘラルド・ポルタレア)

そのエレガントで個性溢れるダンススタイルから、タンゴ・サロンの巨匠として多くのダンサーやミロンゲーロ達から尊敬されているマエストロであり、まさに伝説のミロンゲーロ。

ラ・ルサ(La Rusa)

(インタビューではホルヘはラ・ルシータと呼んでいます)
本名はフアナ・レモス。この本名、まだご健在のミロンゲーラが教えてくれました。みんな、ラ・ルサ、と呼んでいます。
とにかくこの方、正真正銘のスーパー・ミロンゲーラだったようです。
現在、80歳を超えるミロンゲーロ達が口を揃えて
『ラ・ルサは上手かった!凄かった!』と話します。
この方も、まさに伝説のミロンゲーラですね。

CLUB Sin Rumbo (シンルンボ・クラブ)

インタビューの会場。
ビシャ・ウルキサ地区にあるクラブで、数年前にクラブ自体が閉鎖されてから、再開出来ないまま。
多くの街のクラブで開催されていたミロンガが、時代の流れと共にどんどん無くなっていった中、このシンルンボ・クラブのミロンガは見事に生き残り、数々の素晴らしいダンサーやミロンゲーロ達が訪れる『タンゴの聖地』となりました。

では、そろそろ本題へ。
Facebookで映像をシェアしたら、インタビュアーのホルヘ・マンガネリが、このビデオ制作の経緯を簡単に説明してくださったのでご紹介しておきます。

ビデオ制作のいきさつ:ホルヘ・マンガネリ

我らがタンゴの親愛なるお手本達の言葉を思い出にした映像で、スペインのカディスの大学とのプロジェクトで、スペインへ向けて制作したものです。『TANGO COMO LO BAILA MI PUEBLO』という、ビデオ観賞やレッスンのプログラムで、タンゴ国立アカデミーが後援、エンリケ・ビンダ教授のお墨付きでもあります。

ビデオ内容の和訳

色々準備も整いましたので、ビデオの内容へ・・・
最初に青い画面の文章が現れます。その内容がこちらです。

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Sin Rumbo – La Catedral del tango
シンルンボ〜タンゴの大聖堂

これは、「本物のミロンゲーロのタンゴ」を引き継いで来た、全ての方々へ敬意を表して作られたビデオです。一国民、そして一市民である彼らを思い出しながら。18年間、編集をしていなかったこの映像ですが、一人のミロンゲーロとして、目一杯の親しみを込めてこのショートフィルムを制作しました。
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この青い画面の後、シンルンボでのダンス風景が流れます。
そこで踊っているのは、まさにこの後インタビューを受けるポルタレアとラ・ルサ!! 瞬きせずにご覧ください。

そして、こちらがインタビュー内容です。
最初はポルタレアから。

ホルヘ・マンガネリ:

ご紹介するのは、タンゴの偉大なマエストロの一人、彼のカミナータ(歩き)、カデンシア(スイング)、官能的であり繊細なタンゴは、格別に偉大なマエストロと言えるでしょう。ヘラルド・ポルタレアです。ヘラルド・ポルタレアが、マドリッドにいるアルゼンチン人の皆さんと、スペインの皆さんにご挨拶します。

ヘラルド・ポルタレア:

喜んでご挨拶しますよ。ご紹介ありがとう。
マドリッドにいるアルゼンチン人の皆さん。今、そちらはお昼なのか、夜なのか分かりませんので、こんにちは、そしてこんばんは!
こちらから、アルゼンチン人として誠意を込めてご挨拶します。
どうか、心地良く過ごせますように。僕たちの祖国にいるわけですからね、きっととてもよくして貰ってると思います。だから、更に心地よく過ごして下さい。
繰り返していいますが、僕がご挨拶したいこと、それはね、僕らがここで感じているのと同じように、とにかく幸せでいて欲しいということ。

タンゴが好きなら、アルゼンチンの事を思い続けて下さい。僕らも、そして君たちも大好きな、我らのタンゴを続けて行きましょう。
こちらにも戻って来て下さいね、そして戻って来たら、どうかシンルンボ・クラブを訪ねて下さい。よく言われている、タンゴの大聖堂なのかどうかは分からないけれど、きっとそうなんだと思います。
この場所へ、このように多くの人達が日に日に訪れてくれる事を誇りに思いますよ。ご親切に、どうもありがとう。また次の機会にお目にかかりましょう。


そして、次にラ・ルサのインタビュー。

ホルヘ・マンガネリ:

タンゴの大聖堂、シンルンボ・クラブにいます。この方をご紹介するのは大変光栄な事です。とても大切な方ですからね。
タンゴ界のラ・ルシータ!
世界中に彼女のことを知ってもらいたいと思います。
数えきれない数の映画に出演し、数々のタンゴショーにも主演して来ました。
『Tango Baile Nuestro』(私たちの踊り・タンゴ)や『La serenata de Buenos Aires』(ブエノスアイレス・セレナーデ)などですよね。そしてロンドンの**で撮影したビデオも持ってますよ。
(**の部分は音楽が被っていて聞き取れず。すみません。)

ラ・ルサ(ラ・ルシータ):

皆さんに心を込めてご挨拶します。皆さんがここにたどり着いて、シンルンボを知ってもらえるのは、とても嬉しい事です。それに、シンルンボ・クラブは私の居場所なんですよ。 心底、タンゴが好きなんです。生まれた日から今日まで、ずっとね。それしか言えないわ・・・

それでは、こちらのシンルンボ・クラブでのインタビュー映像、お楽しみください!

いかがでしたか?
とても短いインタビューですが、このお二人の言葉、私には、心の奥まで、ズドン!と響いて来ます。何度も繰り返して聞けば聞くほど、タンゴを愛すると言うのはこういう事なのかな〜と。

彼らの踊りにも、言葉にも、この映像にも、“Magia”(読み:マヒア=魔法)がかかっているような気がします。
もちろん、現代の技術的クオリティーに比べると、映像の質は悪いし、音楽の音でインタビューの声が聞き取りにくいし、ダンスの風景も、二人がサロンの奥の方へ行ってしまって、ちゃんと見えないし・・・全然あかんやん!なツッコミどころ満載なのですが、だからこそ “Magia” を感じるのです。全てが分かりやすくて、見やすくて、簡単に説明されていて、便利で、素早く手に入って、楽チン!な現在、とても便利で快適でありがたい事なのだけれど、この” Magia” の居場所が無くなりつつあるような気がしてなりません。

タンゴから、ミロンガから “Magia” が完全に無くなってしまったら、果たしてタンゴなのだろうか?と、勝手にいらん心配をしている今日この頃。でも割と本気で気になるテーマでもあります。

以上、地球の裏側からの熱いコールには、しっかりとお応え出来たでしょうか。
聞き取りなんて不可能に近い、この何とも素敵な時代の映像の音声解読依頼、気が向いたら受け付けますので、ご希望がありましたらお申し付けを。
一緒に、今のタンゴを創り上げてくださった方々の、貴重な “ことばたち” に浸りませんか。

それでは最後に、マエストロ・ポルタレアの言葉をお借りして・・・

『どうもありがとう。また次の機会にお目にかかりましょう!』

【参 考】

今回ご紹介したミロンゲーロお二人の参考映像をこちらに挿入しておきます。
彼らの素敵なタンゴを堪能して下さい。

参考映像 – 1) ポルタレア&マルタ

参考映像 – 2) ラ・ルサ&チノ・ペリコ