〜タンゴの街からタンゴが消える?〜

2020年3月20日、自宅隔離令が発令されたアルゼンチン。
その日からもう1年が経過しました。
厳しい自宅隔離令は解除され、一歩進んでは2歩下がりながら、少しづつ「新たな日常」を取り戻すべく、終わりの見えないウイルス被害と戦いながら、時間ばかりが刻々と流れていきます。
最近、テレビのニュースではワクチンの話題ばかり。さっきもロシアから追加ワクチンSputnikVが37万本届いた!との報道が。アルゼンチンではロシアのワクチンの他に中国のSinovacも輸入していて、今後はアストラゼネカも入って来るよう。これまでに350万人がワクチンを接種したとのこと。人口約4500万人のアルゼンチンでは、まだまだワクチンが不足しているのが現状。
高齢者への接種は少しづつ進んでいて、先日から、我らが愛しのジジババミロンゲーロ達もワクチン接種を受けているようで、ちょっと安心。

そう言えば、先日ワクチンをめぐるスキャンダルがありました。ワクチン接種の優先順位(医療関係者、高齢者)を無視して政治家達やその家族が勝手にワクチンを接種したのです。ヌエベ・デ・フリオ大通り沿いにあるエビータの顔が描かれた公共事業省の建物で起きた『Vacunatorio VIP」(ワクチンVIPルーム事件)。すぐに厚生大臣が解雇され、そのスキャンダルはあっけなく終了。ワクチン接種した政治家やワクチンVIPルームのことを知っていた政治家なんて沢山いるはずなのに、厚生大臣の解雇だけで良いの?と思いましたが、政治腐敗が根を下ろすアルゼンチン、スキャンダルはあっという間に揉み消されました。

さてそんな中、タンゴ界は一体どうなっているのか気になるところ。
タンゴはコロナ禍によって世界的に最も被害を被った分野の一つ。物理的にも精神的にも二人が親密に関わり合う踊りであることがタンゴの醍醐味の一つであるが故、コロナ禍ではそれが大きなダメージに。そしてそれはタンゴの生まれたアルゼンチンでも同じ。3月に自宅隔離令が発令され、全てのタンゴの活動は禁止されました。

アルゼンチンはとても大きな国なので、色んな取り決めも州によって様々。ここからは、特に《アルゼンチン・ブエノスアイレス自治市》についてのお話し。
現在、ブエノスアイレスにおいて、タンゴ関連で活動が可能なのは、ショーやライブ形式のタンゴのみ。ミュージシャン達の演奏、そしていつも同じ特定のカップルが観客とは距離をおいた場所で踊るということで、他の芸術活動と共にタンゴのショーも許可されたようです。
しかし《アブラッソをしてのレッスンやミロンガ、プラクティカ》は、ブエノスアイレスでは未だ「一切」認められていません。
そこで、少し動き始めた昨年末からのタンゴ事情を、政府やAOM(ミロンガ主催者協会)が発行した文書やジャーナル記事等を参考にしながら、時の流れと共にご紹介して行こうと思います。一回での掲載の方が流れが分かりやすいので、少々長いですがお付き合い下さい。
※以下、参照のAOM文書は紫の背景色で、その他の記事についてはグレーの背景色で記しています。

まずは昨年の12月22日。
テレビで『タンゴに対する衛生プロトコルが発表された!』との嬉しいニュース。

プロトコルが掲載されているという文化省のサイトへ入ってみると、こんな記事が。
タンゴに関して一切音沙汰の無かった状況でのこの発表、少し心が浮き足立ったのを覚えています。

https://www.cultura.gob.ar/se-presentaron-los-protocolos-para-la-actividad-presencial-de-danza-ci-9928/?fbclid=IwAR283KO98vqG7QnJB3BJ_X0RndNsiq-QvDM_pKM7-7ehKXgl5in7PV43Ue8

記事の一部をこちらにご紹介。

<舞踏、サーカス、タンゴの対面活動に対するプロトコルが発表される>
これら3分野に対して対面活動を再開するための衛生プロトコルが発表された。
COVID-19に対する文化部門への対策

衛生上の緊急事態の影響を緩和するために実施された政策
国の文化省は、文化開発事務局とその国の文化産業局および文化プロジェクトの推進を通じて、舞踏、サーカス、タンゴが対面活動に戻ることを認める衛生プロトコルを提示した。最近、文化省が文化産業分野として取り入れた3つの芸術活動である。 発表されたプロトコルは、国の文化省、労働リスク監督局(SRT)、および様々な協会、組織、部門活動による共同作業と承認のたまものである。 これらの各分野のプロトコルは、特定の活動に対応する担当者が介入する事により、雇用主が活動を段階的に正常化する計画が立てられるように、予防策を提案している。・・・

※ここで言う「プロトコル」とは手順や取り決めを記した文書。これまで「マニュアル」と訳して来ましたが、プロトコルには手順だけでなく約束事や取り決めなども含まれるため、今後はアルゼンチンで使用されている表現の通り「プロトコル」と表記します。

この記事で、やっと活動再開の目処が立ったような気がして、嬉しくなったものでした。
さて、このサイトの記事の最後には、3分野それぞれの衛生プロトコルが添付されています。実際のサイトの記事ではクリックするとプロトコルを見られるようになっています。

Descargar protocolo del sector tango  (タンゴ部門のプロトコルをダウンロード)
※クリックするとアルゼンチン文化省サイトに掲載されたプロトコルにリンクします

リンクに入ってみると、ブルーの表紙でこんな風に始まります。

2020年12月
PROTOCOLO PARA MILONGAS, PRÁCTICAS DE TANGO Y CLASES DE TANGO 
ミロンガ、プラクティカ、タンゴ・レッスンに対するプロトコル
GUÍA DE RECOMENDACIONES PARA PREVENIR
Y DISMINUIR EL RIESGO DE TRANSMISIÓN DE COVID-19

(COVID-19の感染リスクの予防と軽減のため推薦事項ガイド)

プロトコルは全36ページとかなりボリューミーなので、参考までに一部だけご紹介。

5. ミロンガ、プラクティカ、タンゴ・レッスンの主催
5.3.   ミロンガ、プラクティカ、タンゴ・レッスンの主催者は参加人数を限定し、参加者の事前予約をとること。
5.4.   全員がCOVID-19に関連する症状が無いことをうたった健康に関する宣誓書に記入すること。
5.6.   同居するカップル又はいつも一緒に踊っているタンゴのカップルのみの参加を許可する
5.7.   必ず下履き用の靴からダンス・シューズに履き替えること
5.9.   カップルの交代は一切しないこと
5.10.   踊っている時に決して会話をしない事を参加者に徹底すること。今や欠かせない、タンゴ・ダンスの重要な特徴的事項。
5.11.   フロアで踊っている人達と会話をしないこと。
5.12.  会話する際には静かに、いつでもマスクを鼻、口、顎にかけて着用、相手との距離を保つこと。
5.13. ダンス・カップル間の距離を保つことは主催者の責任

クリスマスを前にこんな衛生プロトコルが発表され、タンゴ関係者の期待は高まりました。
そして、これを受けてクリスマス・イブにはAOMからこんな文書が発表されました。

<再開への第一歩>
国が認めた一般的プロトコルが出来た
各管轄でのプロトコル承認に向けて進もう

AOM 及びMi.Se.Soから協会メンバー及びタンゴ・コミュニティの皆さんへのお知らせです。
ブエノスアイレス市の文化省担当者は、国家によって承認されたミロンガ、プラクティカ、タンゴレッスンの開催のためのプロトコルを元に、我々のタンゴ活動の認可を求めるための提案書をブエノスアイレス市衛生局に提出します。
しかし、2020年11月3日に提出したプロトコルの認可について、本部門がすでに承認を拒否している事を認識しています。我々の分野が直面している困難は承知しています。
しかし我々(協会)は、全ての人が安全に活動を再開することが出来るように注意を続けるべく、一体となって各自の意識に訴えます。
ブエノスアイレス、2020年12月24日
AOM / Mi.Se.So

先日発表された衛生プロトコルでタンゴの活動が再開出来る!と思っていたら、そうではなかったのです。例のプロトコルは「国家レベル」であり、実際に活動を再開するには各管轄区域の承認が必要。すなわち、ブエノスアイレス市の承認が必要だということ。そんなことは露知らずヌカよろこびしてしいました。

そんなこんなで、ブエノスアイレス市衛生局の承認を待ちつつ、コロナ禍にあろうとも、国民の心浮き立つ真夏のクリスマス、年末年始のパーティーシーズンが到来。
そしてアルゼンチン国民にとっては、命の次に大切な(ように思える)バケーション・シーズン(1〜3月)に突入。バケーション先での開放感のせいか、若者達の違法パーティーなどの報道もあり、感染状況もまた厳しい状況に。
そんな中、あちらこちらの公園で青空ミロンガが開催され始めました。某有名サロンでも、複数の有名ミロンガが開催され始めた事なども耳に入って来ました。

やっとブエノスアイレス市の承認が降りた!?

またコイツか・・・と、うるさがられることは承知でAOMの代表フリオ・バッサンに電話してみると・・・
「ブエノスアイレス市のプロトコルの認可がまだ下りてないんだ。だから、今、開催されてるミロンガは全て違法だよ。」

えー!! 違法? マジですか・・・

そう、我慢出来なくなって来たタンゲーロ達が、承認を待たずに勝手にミロンガをやり始めてしまったのです。1年間仕事が出来ない状況の中、いい加減やりたい気持ちは本当によく分かります。
でもやはり、法的に承認されていない状況で開催するというのがどうしても気になります。集団感染などが発生しないことを祈るばかり。

そうこうしている内に、あっという間に3月に突入。
アルゼンチンの大手ジャーナルClarin(クラリン) が3月10日にこんな記事を出しました。 チャカブコ公園で行われた青空ミロンガを取り上げた記事です。是非リンクに入って写真をご覧ください。

https://www.clarin.com/fotogalerias/volver-abrazar-milongas-locales-bailar-tango-cumplen-ano-cerrados-argentina_5_Ox5nUzvsg.html?fromRef=facebook&fbclid=IwAR3t2M1VmWztxN3MICBdoSy5BVlb6F_J4MzpkQKEKqVEn8qQvzHudfbiuFU

記事の内容はこちら。

写真に付随した解説文にアルゼンチンの現状がわかりやすく書かれているので、参考までに掲載します。
(番号は各写真に対応しています)

愛とタンゴ、タンゴダンス、閉鎖の1年、地元ミロンガのアブラッソ再び
(1/15) チャカブコ公園にて踊る複数のカップル。アルゼンチンではタンゴ・レッスンやミロンガが閉鎖されて1年が経過する。
(2/15)「タンゴで君を抱擁すると時間なんて忘れてしまう」Amor y Tango(愛とタンゴ)の歌詞ではこう歌われている。タンゴは世界無形文化遺産であり世界中で踊られている。
(3/15)チャカブコ公園でタンゴを踊るカップル。
(4/15)ブエノスアイレスのタンゲーロ達は絶望の境地に。昨年の3月11日から、ダンサーや歌手他、タンゴ労働者達はCovid-19によるパンデミックにより一切仕事が出来ない状況。衛生プロトコルに従って、「アブラッソ」するためにミロンガ開催が承認されるよう、市政側とたたかっている。
(5/15)観光客も参加していたタンゴレッスンは、アルベルト・フェルナンデス政府が昨年の3月20日に発令した隔離令と国境封鎖により、閉鎖されている。何とか生き残った者たちも、今年の年末まで再開しないだろうと予見している。
(6/15)労働者や事業主にとって深刻な状況である。タンゴ・リオプラテンセ(ラ・プラタ川沿いのタンゴ、すなわち、アルゼンチンとウルグアイ)は世界文化遺産に指定されており、アルゼンチン国家が活動を保護すべきものである。
(7/15)タンゴ・ハウス(タンゴ・ディナー・ショーの店)は90%が観光客相手。この分野は『3月19日から完全に閉鎖されており一切の収入が無い。』 <エル・ケランディ>のオーナー、クラウディオ・オカンポはこう語る。<エル・ケランディ>はブエノスアイレスの歴史的な街中にある古い豪邸をリフォームされていて、パンデミック当初までタンゴのディナー・ショーが行われていた。
(8/15)首都にある13軒(ブエノスアイレス市のデータ)のタンゴ・ハウスは、外国人観光客を迎え入れたり、国際会議やコンベンションのために来日する企業に対するもてなしを行なってきた。
(9/15)観光客向けに、ディナーとショーが含まれていて、このタンゴ・ハウスによると、5カップル、6人編成のミュージシャンと3人の歌手がステージに上がっていたと言う。
(10/15)1年前からミロンガと呼ばれるものも開催することが出来ない。カルチャーセンターや地元のクラブ、学校やサロンでアルゼンチン人や外国人がタンゴを踊るために集っていたところ。
(11/15)タンゴ労働者連邦議会が行った調査によると、この国に存在する7000人にも及ぶタンゴ労働者達が1年前から働くことが出来ていない。本調査は、ミロンゲーロ達が文化産業の一部である事を認められタンゴ労働者を制度化するために実施された。
(12/15)2020年末、アルゼンチン国家はミロンガ、プラクティカ、タンゴレッスンのための衛生プロトコルを承認した。しかし、その活動は国家にも、首都をはじめ、複数の管轄区域においても認可されていない。
(13/15)ミロンゲーロ達は少しづつ段階を踏んだ活動の再開を求めている。しかし政府は活動を承認しない理由を説明せず、今後の方針も出さず、仕事をさせない上に、経済的支援もしていない。
(14/15) 2021年2月6日、ミラノの中心、ドゥオモの広場でタンゴを踊るカップルを眺めて楽しむ人々。Covid-19のパンデミックの中、イタリア政府が、ロンバルディア地区の規制を緩和した際。
(15/15) イタリア、ローマの道端でタンゴを踊る人々。タンゴは無形文化遺産であり、世界中で愛好されている。

タンゴをめぐる現状が上手く説明されていて面白いのですが、どうしても気になることが・・・
それは、《現在、ブエノスアイレスでのミロンガ開催は違法である、という事には一切触れていない》こと。
ミロンガを開催したい、踊りたい気持ちは痛いほど良くわかります。でも多くのタンゴ労働者、ミロンゲーロ達が、そんな気持ちをグッと抑えて我慢している中、まるでこのようなミロンガ開催を認めているようにもとれるこのクラリンの記事。タンゴの現状を記事にしてくれた事は素晴らしいこと。しかし、日々刻々と変化するデリケートなテーマであるだけに、影響力のある新聞社として、もう少し気を配るべきだったかもしれません。

そんなある日、AOMからFaceBookでこんな文書が投稿されました。

3月11日(木)19時より、ブエノスアイレス市文化省前 (Av. de Mayo 575 ) にて、ブエノスアイレス市にタンゴ活動の許可を求める抗議活動を行います。主な目的は以下の通り。

★タンゴ活動に対する衛生プロトコルの承認、それによるタンゴ活動の再開
★タンゴ関連分野への大幅な経済的支援

本活動はミロンガではなく、約一年にわたりタンゴ関連分野が活動出来ずにいる事を明らかにするもの。
<デモ活動参加者へのお願い>
-黒い服を着用
-マスクを着用
-以下の内容の看板を持参、白い紙に黒い文字で。
  ●無視された世界遺産タンゴ
  ●タンゴは文化であり仕事でもある
  ●1年間一切労働ができていないタンゴ界
  ●タンゴへの経済的補助を
  ●タンゴはまた歩き始めたい
  ●ブエノスアイレス市で唯一禁止されている文化活動、それがタンゴ
デモ活動中は、ソーシャル・ディスタンスを守ろう!
AOM / Mi.Se.So

12月に文化省公式サイトに掲載されたタンゴに対する衛生プロトコル、やはりまだブエノスアイレス市の承認が下りていなかったのです。
これはもう、タンゴ労働者達の心の叫び。
他の芸術・文化ジャンルは活動が認められているにも関わらず、タンゴ活動だけが承認されていないのです。
ちなみに、承認されていない「タンゴ活動」とは、ミロンガ、プラクティカ、アブラッソを伴うタンゴ・レッスン。

そして3月11日(木)夜7時半頃、Av.de Mayo(5月大通り)575番へ行ってみました。
すでに抗議活動が行われている最中でした。

大通りの半車線が封鎖され、パトカーも1、2台。思ったより寂しいデモ活動。ミロンガ愛好家には高齢者も多く、参加したくても出来なかった人も多いようです。それでも、集まったタンゴ労働者達、タンゴ愛好家達の悲痛な叫びは、「抱擁」ではなく握りしめた拳(グー)を合わせて挨拶を交わす度に、伝わって来ました。

「オンライン・レッスン?うち、WiFiの調子が良くなくてレッスンにならないから、もうやめたわ」
「オンライン・レッスンはイベントやフェスティバルに呼ばれた時だけ。もちろん対面レッスンは一切してないよ」
「他州ではミロンガの開催が認められてる所もあるんだよ!」
「芸術・文化部門で活動が認可されてないの、タンゴだけよ!」
「〇〇会場からミロンガをしないかって誘われたけど断ったよ」
「違法のミロンガに参加するつもりも無いし、開催するつもりも無いね」

違法ミロンガに対するAOMの対応について聞いてみると・・・
「AOMから忠告は何度もしているよ。中には警察が来て閉鎖されたミロンガも。それでもまたやるんだよね。AOMは警察では無いから、コミュニティの安全を第一に考えた活動はするけれど、違法開催を取り締まったりはしないよ。」
「ミロンガ、プラクティカ、タンゴ・レッスンなど、不特定多数の参加者がアブラッソして踊る活動は一切認められていないのが現状。国家レベルのプロトコルはあっても、ブエノスアイレスで認可が下りないとどうしようもないんだよ」

そして、AOM代表のフリオ・バッサンが、ミロンガ開催のためのマニュアルの認可やタンゴ関連部門への経済的支援を訴えました。最後に手作りのポスターを大きく掲げ、それを文化省の巨大な扉や壁に貼り付けて、その日の抗議活動は終了しました。

その日の夜10時半には、早速、ネット・ジャーナル誌 RePerfilAr に抗議活動に関する記事が掲載されました。

https://www.perfil.com/noticias/reperfilar/milongueros-protestaron-frente-al-ministerio-de-cultura.phtml?fbclid=IwAR2gYoUpCxsDWHOAgbD0WcoOSvlKQZH7B9gGaGF9OdhOxrFctwAr_rjllzc

文化省前でのミロンゲーロ達の抗議活動はこんな風に行われた
ブエノスアイレス市のミロンゲーロ達が文化省の前に集まり、国レベルではすでに施行されている活動を可能にするよう政府に要請した。 ミロンゲーロ達の代表フリオ・バッサンは、一年前から、5000もの家庭が緊急事態に瀕していることを明らかにした。
ブエノスアイレス市のミロンゲーロ達は1年前から活動を停止しており、活動再開を要請するため、今週11日の木曜日に文化省の前でデモを行った。 我々RePerfilAr誌は実際に抗議活動に参加し、ミロンゲーロスの代表であるフリオ・バッサンに話を聞いた。主張の内容として、国レベルですでに存在するプロトコルをブエノスアイレス市でも有効にすること、そしてタンゴ部門全体への経済的特別支援を求めることである、と説明した。 市内で見られる「違法な」ダンス会場に関して、みんな生き残るために仕方なくやっているのであって、違法であり続けないために、「活動の承認のためのプロトコル」を政府に要請しているのだ、とバッサンは述べた。 そして彼は、「経済的な緊急事態にあり、限界にある家庭が5000軒もあり、ダンス会場は閉鎖の一途にある」と付け加えた。 最後に彼は、このままミロンガを開催できないままだと、ダンススクールやダンスサロンがなくなり、酷い状況に陥る、という懸念に言及した。 そしてこう述べた。 「これ以上待つことは出来ないよ。すでに何回も会議を開き、市の厚生省に要請を出しているのだから」

抗議活動、そしてRePerfilAr の記事に、何とも切ない気持ちになっていた矢先。
デモが行われた週末、3月19日の金曜日、AOMからこんな文書がアップされました。

幾度にもわたる手続きや活動の末、本分野の他の代表者達と共に、ブエノスアイレス市文化局エンリケ・アボガドロ氏と衛生局のフェルナン・キロス氏とのプロトコルやタンゴ関連活動の認可等についての会議にやっとのことで招集されました。
会議は3月22日(月)に行われます。終了後、タンゴコミュニティへ報告します。
AOM / Mi.Se.So

やった!!タンゴの悲鳴がブエノスアイレス市へ届いたのでしょうか。少しだけ希望が見えた週末になりました。
そして、上記文書の通り、月曜日には会議が開かれた模様。
こんな文書が掲載されました。

2021年3月22日 ブエノスアイレスにて
上記の日付において、ブエノスアイレス文化局エンリケ・アボガドロ氏と衛生局のフェルナン・キロス氏によって招集された会議に参加しました。その他に、ダニエル・フェランテ、モラ・シシャマ、マルセロ・ボッタロ(Mi.Se.SO)、アウロラ・ルビス(ダンサー代表)、レオナルド・クエショ、オラシオ・ゴドイ、オマール・ビオラ(ミロンガ会場の代表)、アナ・ボクッティ(AOM)も参加しています。会議の感触は良好であり、今週にも話し合いがなされ、タンゴ活動の再開が承認されるためのプロトコルの認可が短期間で下りるよう共同での活動計画が立てられています。 市政側の協力的な姿勢とタンゴ関連分野代表者達の責務により、1日も早く労働が可能になると信じます。新たな展開があればまた報告します。
AOM / Mi.Se.SO

まさに、フリオ・バッサンも述べているように、活動を禁止したまま、違法ミロンガが増えていくよりは、プロトコルに従って、ミロンガの主催者、参加者共に各自責任を持って「合法的」に活動する方が、感染リスクも少ないはず。
感染リスクの問題でまだ再開が認められないのであれば、1年間にわたり一切仕事が出来ない状況にあるタンゴ労働者に対して、何らかの経済的支援を早急に検討すべきでもあります。
そんな事を考えながら、AOM発行の最後の文書で少し希望の光が見えた気がしていました。

ところが、アルゼンチンでは感染者が再び増加、国境を共有するブラジルの変異種(マナオス種)の問題もあり、コロナ被害状況が急激に悪化。航空会社も便数を減らし、政府は海外への渡航も自粛するように訴えています。
また、私もオーガナイザの一人として関わってきた「ミロンガ・ヘンテ・アミーガ」の主催で、3月27日(土)にフローレスのペドロ・エチャウエ・クラブにてディナー&ショー(ミロンガではありません)の開催を予定していたのですが、感染状況の悪化により、急遽キャンセルせざるを得なくなってしまいました。ミロンガではなくても、久々に親しみ深い地元クラブで、タンゴ音楽に包まれてヘンテ・アミーガ(仲間たち)に会えることを楽しみにしていたばかりに、残念でなりません。でも今は感染予防を最優先にすべき時。またの機会を楽しみにしたいと思います。

コロナウィルスとの闘い、そしてタンゴを守るためのブエノスアイレス市との闘いは、まだまだ終わりそうにありません。
文化省前でのデモ活動のために手書きされたポスター。

『タンゴは文化であり職業である』

『ブエノスアイレス市から無視されたタンゴ』

『タンゴはまた歩き始めたい』

胸に突き刺さるようなこれらの言葉。
タンゴの国、タンゴの街から愛するタンゴ、そしてミロンガが、消えてしまいませんように。

今しがた「75歳以上」の高齢者へのワクチン接種がスタート、とのちょっと嬉しいニュースが飛び込んできました。
早速、《若手》ジジババミロンゲーロス達に連絡せねば!!
どうか皆様、心も身体も健やかにお過ごし下さい。

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