『クアレンテナ』とはスペイン語で、一般的な使い方としては『自宅隔離』のこと。
元々の語源はラテン語 Cuadraginta =10を4回、イタリア語にすると Quaranta Giorni という宗教的な語源だそうで、14世紀にヨーロッパでペスト(Peste Negra =黒死病)が流行した際に、ペスト感染が怪しまれる人に対して40日間の隔離を行うという行為に対して使われ始めたそう。(出典:Wikipedia : Cuarentena)
スペイン語の40はCuarenta=クアレンタ なので、そこからも想像がつきますね。
アルゼンチンでは3月19日にコロナウィルス感染拡大予防のためのクアレンテナ(全国的自宅隔離)が発令され、ブエノスアイレスでは未だに厳しい隔離を実施中。
クアレンテナがスタートしてから80日近く経過しており、報道番組などではよく、
『クアレンテナは40日の隔離で使われるのに、この国ではもっと長期間の隔離になってるんだから、もうクアレンテナとは呼べないね。80日の隔離だとOchenta (オチェンタ=80)なんだからオチェンテナになるよね』なんて、世界一長く厳しいと言われれているクアレンテナを皮肉ったりしています。(2020年6月現在)
まあ、クアレンテナにしてもオチェンテナにしても、我々一般市民にとっては引きこもり生活を強要されるわけで、長くなってくると精神的にも疲れて来ます。
そんな中、私は、たま〜に、ミロンゲーロ、ミロンゲーラのジジババ達と電話でお喋りし、彼らのユーモアに癒されつつ、楽しいひと時を過ごしています。
そんな電話でのお喋りの一部をご紹介します。
このジジババズ、ほとんどが80歳超えにも関わらず、すごくエネルギッシュ。
(実際には1日3人が体力的・携帯バッテリー的に限界です)
👞ミロンゲーロA
R : どうしてたー?元気?
MLO-A:
ちょっと聞いてえや。
朝の5時にピンポン鳴んねんで。
窓から覗いたら光をピカピカさせたドデカい救急車が止まっててなあ。
インターホンに返事したら….
救急隊 : お宅、救急車呼びましたやろ
ML-A : 呼んでませんけど
救急隊 : 63番9号ですよね
ML-A : えー、そうですわ!
誰が呼びはったんかね
救急隊 : ◯◯さんですわ
ML-A : あーちゃいます、ちゃいます
救急隊 : 一筋間違ってましたわー!
すんまへんなあ。
もし、わしの名前言われてたら、失神してたわ。ウィルスに感染するよりタチが悪いわ。ほんま、ひと騒がせにも程がある。
* * * * *
👠ミロンゲーラB
MLA-B : 実は、めっちゃ心配な事があってねえ…..
R : えー、どうしたん?
体調良くないの?大丈夫?
MLA-B : このウィルスが収まった時の経済打撃が心配で仕方ないんよ。アルゼンチンだけやない!世界の経済がかなりな打撃を食らうでぇ、どうしたもんかね。
世界経済の危機やで!
(八十ウン歳のミロンゲーラ、言うことが国際的!)
* * * * *
👞ミロンゲーロC
今、ちょうどテラスを歩き回って来たとこや。
この歳で、踊らないわ、歩かないわを続けたら、もうクアレンテナ(自宅隔離)から二度と抜け出せんからなあ。
実はなあ、試したいフィグーラがあるんやが、それも出来ひんのが悔しいてならんわ…..
(ホンマに哀しげでした)
* * * * *
👞ミロンゲーロD
R:元気? 外出てないやろね?
MLO-D:
ほとんど家から出てないで。
あーでも、こないだ娘と薬局へ薬を買いに行ってね。もちろん、薬局でも他の人と距離をとったりして、めっちゃ気をつけたで。
薬を買って家に帰って来て、玄関入ったところで娘が言うねん。
『おとん、ここで服全部脱いで、すぐにシャワー浴びてや!』
おーまじかいな!と、大慌てで素っ裸になって、さっぶい廊下通ってお風呂場へ飛び込んだわ。
すぐにシャワーを浴びようとお湯の方ひねったんやけど、全然お湯が出えへんねんわ。最近、急に涼しくなったから、お湯になるのに時間かかったんや。この年で水風呂やで。
こんなことしてたら、コロナにかかる前に凍え死ぬわ。ほんまに参ったわ〜。
R:あははは・・・・・・
(その時の様子を想像してしまい、電話口で笑いが止まらなくなる)
MLO-D:笑い事やないで!
* * * * *
👠ミロンゲーラE
R:ほんま、このウィルス、タチが悪いなあ。
MLA-E:このコロナウィルス、どっから来たか私、知ってるんよ。
R:え? どっから来たん??
ML-E:
若い頃に観た映画で、宇宙船が出てくるやつがあってん。
その宇宙船から降りて来た宇宙人が、まん丸で4本足が着いてたんよ。コロナもまん丸で足が何本か着いてるやろ、そっくりや。
コロナウィルスは地球上のものやない、宇宙から来たんやで!
(新型コロナウィルス・宇宙からの地球侵略説!)
* * * * *
👠ミロンゲーラ F
R:娘さんが電話に出たんやね。お世話しに来てくれてるん?
MLA-F:そうなんよ。すぐ近くに住んでるから、いつも来てくれるんよ。
今は娘が面倒見てくれるけど、若い頃は兄がいつでも面倒見てくれてね。
R:へえ〜、お兄さん優しかったんやねえ。
MLA-F:そういえばね、兄がいつも仕事に行く時に乗ってた電車の駅でゴシェネチェと知り合ってね。
R:ご、ごしぇねちぇ? えらいすごい人と駅で知り合ったんやね。
MLA-F:
兄がね、タンゴが好きな可愛い妹がいるんや!とゴシェネチェに言うたらしいわ。
そしたらゴシェネチェがね『明日は僕が君んちに迎えに行くから、君の妹にも家にいるように言うといてくれよ』って。
翌朝、部屋の窓から覗いたら、ゴシェネチェが下にいてね、一曲歌ってくれたんよ。もう最高やったわ。
(さすが、タンゴ黄金時代を生きたミロンゲーラ!)
El Polaco Goyeneche (ポラコ・ゴシェネチェ)の映像
♪『Garua』(霧雨)
1968年 映画『El derecho a la felicidad』より
バンドネオン演奏:Ernesto Baffa
https://www.youtube.com/watch?v=UbHnjU6YT2g
♪ 『SUR』(南)
ゴシェネチェの最後のコンサートは、何と日本だったそう。
日本のタンゴファンの前での熱唱映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=91xx2zUTq_c
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👞ミロンゲーロG
R:さっき電話したけど出なかったから心配したわ。元気?
MLO-G:ああ、ちょうどテラスにいたんや。
R:いいね〜テラスの風にあったってたんやね。
MLO-G:いやいや、運動不足やから歩き回ってたんや。
今日はテラスを五十五周したわ。
(ごじゅうごしゅう….. 数えたのね、案外、几帳面。)
* * * * *
👠ミロンゲーラH
R:久しぶりやね、その後どう?
MLA-H:前より年寄りよ。
R:・・・・(そりゃそうやね、笑)
MLA-H:それにしても、九十近くになって、他人に指図されるなんて、
やってられんわ。
R:え、他人に指図されるって、誰に?
MLA-H:『政府』にやないの!
家から出るなとか、手を洗えとか。
ほんま、やってられへんわ!
(確かに、クアレンテナは ”他人” からの “指図” やね。)
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👞ミロンゲーロ i
【ボイスメッセージにて】
R:元気? 後で電話するわね!
MLO-i:いつでも電話して来いやー。
どうせ今夜は踊りには行かないし。
今夜は寒くなるから、家にいるに限るよ!
(ミロンゲーロはボイスメッセージも粋やないとあきません。)
クアレンテナも長くなり、NETFLIXで面白そうな映画もドラマも見尽くした今日この頃。
電話をする度に笑いと感動を巻き起こしてくれるジジババミロンゲーロス。
最強のエンターテイナー!
まだまだ続きそうなクアレンテナも、彼らとのお喋りがあれば、退屈することはありません。